Clifford Brown with Strings

Clifford Brown With Strings

Clifford Brown With Strings

1988年。私の初めての渡米先は、当時勤務していた外資系企業の本社があるサンフランシスコだった。空港からホテルに向かうタクシーの窓から見える景色は、まぎれもなく映画「ダーティーハリー」そのものだった。

市街地に入り、ダウンタウンとおぼしきエリアにかかった時、ドライバーに「Dangerous zone?」とたずねると、アフロ・アメリカンの彼はニヤリとしながら「Nice neighbors」と答えた。

ユニオンスクウェア近くの高層ホテルの部屋から見える街並みは、不思議な位どこもかしこもモノクローム。決して時差ぼけのせいで色が見えなかったわけではない。It never rains in Southern California. 青空は果てしなく澄み渡っていたのだから。

前々回で William Claxton のことを書いたので、久しぶりに彼の写真集を開いてみた。彼の写真を眺めているうちに、なぜか初めて渡米した時のことを思い出してしまった。

私が既にJAZZにどっぷりつかっていた頃。Pacific Jazz や Contemporaryレーベルで使われていた、彼のレコードカバー写真のイメージこそが、私への WestCoast に関する事前情報であり、私にとってのJAZZ そのものだった。

カラー写真では駄目。きれいな分写真自体が持つパワーが希薄なように思えてしまう。やっぱり JAZZ の写真は、モノクロ写真か2色刷りに限る。2色の陰影が、いつまで経っても褪せない時代の空気を封印しているから。

今回は、Clifford Brown with Strings を紹介しよう。1955年にEmArcyレーベルからリリースされた。Neal Heftiが率いるオーケストラをバックに、朗々たるトランペットが響き渡る。ストリングスものにはつまらないものが多いのだが、これは内容、人気ともに抜きん出ている。Brownie の愛称で親しまれた彼は、25歳で早逝した。1956年、交通事故だった。

(JHS-JAZZ 山田)