『好きなことだけやればいい』

好きなことだけやればいい

好きなことだけやればいい

人生訓や成功の秘訣などについて書かれた本は読まない。ボクにとっては時間の無駄だからだ。「道なき道に、新たな道をつくる」とか「時間は空けるものではなく、つくるもの」だとか、「強さとは、己の弱さを認めること」なんてことを言われても、天邪鬼のボクは「どうぞご自由に」と返事をしたくなるのだ。

ところで本書は、テレビでは有名らしいカリカチュアリストの人生訓といったところの本だ。帯には「ソロモン流テレビ東京)出演後、大反響!」とある。「ソロモン流」は大笑いできるほどの成金趣味の方々が登場するテレビ番組だと思っていたので、いよいよ買ってはいけない本なはずだ。

しかし、本書は意外にも面白い。というよりも「我が意を得たり」と膝を打ちたくなる本なのだ。とりわけ第2章の「お言葉」には秀逸なものが多い。第2章の最初の言葉は「今の性格で成功するしかない」だ。本当に多くの人が自分は、より外交的に、より落ち着きのある、より慎重に、より大胆になるべきだと思っている。本書のいうとおり「今の性格丸抱えで、成功を目指していけばよい」のだ。

著者は「学びのステージにおいて、最も大切にすべきことは個性ではない」という。完全に同意するものだ。ボクも最初から個性的であろうとして、自滅する人を何人も見てきた。基礎なき普通の人になってしまうのだ。「思いは、明確に言語化できるまで考えよう!」人にきちんと伝えることができず、立派な思いをもちながら、砕け散ってしまう人も何人も見てきた。

パラパラっとめくって、素直になるほどそうだよね、と思えるメッセージが書かれている本だ。50才を過ぎたボクから見ると「30そこそこの若造が10も違わない後輩に語ってどおするんだよ」と思う反面、なんだか気持ちが良くなってしまう本だ。「先輩からは技術を、後輩からはハートを学べ!」と本書はいう。「はい、そのハート、学びました」と素直に答えておこう。

ちなみにこの書評の第1パラグラフで紹介した3つの言葉も本書からだ。本書はある意味で玉石混交の書なのだが、それもハートのうちなのだ。若者が言い古された言葉を再発見するというプロセスを見ることができる。