「ゴルフに例えると」 東洋経済6月6日号「ゴルフざんまい」掲載

世の中ゴルフ狂が多いらしく、じつに多くのことがゴルフに例えられて説明されている。

社労士試験について、学習方法をクラブに、講師や教材をコーチに、受験勉強時間を練習時間に、模擬試験や本試験をラウンドに例えて説明するサイトがある。もし、この程度のことをゴルフに例えなければ理解できないというのであれば、その人は人生の全てをゴルフに捧げているはずだ。間違いなく社労士ではなく、プロゴルファーを目指すべきだ。

四字熟語をゴルフに例えて理解を深めようとするサイトもある。まず「水魚之交」をプレーヤーとキャディの関係だと説明する。「豪放磊落」は普段のスコアは90台だが、たまに爆発的なスコアを出すことがあり、アプローチやパッティングは冴えない人の性格だと断定する。そして「他力本願」を、賭けかたの一種である「ラスベガス」を持ち出して説明する。そしてこの説明者は、自分はいつもラスベガスでは、パートナーを頼りにするばかりだと嘆くのである。素直に辞書をひくほうが、熟語の意味を理解できるであろう。

テニスのショットを説明するために、ストロークをドライバーに、アプローチはアプローチにボレーはパットに例えるサイトも見つけた。このたとえでは、テニスではグリーンを自分で作らなければならないという。「グリーンにあまり寄せきれないと、パター(ボレー)は難しくなり、スイングを大きくする必要が出てしまいます」と説明される。難しすぎて、もうどうにでもなれという気分になる。

住宅ロ−ンのコストについて、金利をプレー代に、団体信用生命保険をグリーンフィーに、保証料をキャディ−フィーに例えているサイトも見つけた。

じつはゴルフ場利用料のほうが判りにくい。施設管理費や厚生負担金がグリーンフィーやキャディーフィーと別項目になっている理由が判らない。ロッカーフィーはロッカーを使わなければ支払わなくても良いのであろうか。そもそもゴルフ場利用税こそが謎そのものだ。

ところで、じつに不謹慎なゴルフの例えをしたのは、先日知人女性とゴルフ旅行に行き、その不適切行動を咎められて辞任した鴻池元官房副長官である。去る3月30日にも北朝鮮のミサイル発射について「そっちへ行ったら『ファー』って感じだな」と発言しているのだ。

この人はよほどのゴルフ好きなのであろう。ゴルフで人生における大失敗を2回もしている。ゴルフ規則33の7によれば「委員会はプレーヤーがエチケットの重大な違反に当たると考えた場合、競技失格の罰を課すことができる。」とある。この人の場合、一回目で失格になっていれば、政界「ラスベガス」のパートナーだった麻生首相には類が及ばなかったかもしれない。