Roland Kirk / Now Please Don't You Cry, Beautiful Edith

ビューティフル・エディス(紙ジャケット仕様)

ビューティフル・エディス(紙ジャケット仕様)

考えてみれば、そういう人がいても当然なのかもしれない、先日日、ある若者に「レコードを見たことがない」と言われてしまってビックリした。今年は、CDが売り出されてから27年目。平成世代なら、物心ついた頃には裏面がキラキラ光るプラスチックの円盤しか家に無かったということか。

アナログレコードは、まだまだ現役の記録メディアである。amazonHMVのサイトを覗いてみれば、ジャンルを問わず、国内盤、輸入盤合わせて約17,000タイトルもの新品レコードが売られている。再発盤だけでなく、CDとの併発ではあるが新譜としてリリースされるLPも多い。

アナログレコードを聴く行為は儀式に近いかもしれない。儀式だから、当然決まりごとがあるし、決まりごとを守るのはそれなりに面倒くさいが、手間隙かけてやっと入手した年代物を、自分の代で新たな傷を付けないように丁寧に扱いたいものだ。

カバーから指紋が付かないようにレコードを出して、ターンテーブルに載せる。レコードクリーナーで盤面についている埃を取る。ターンテーブルを回転させ、カートリッジの針先をレコードの外周部に下ろして、プリアンプのボリュームを上げる。片面約20分の至福の時間の始まりである。

いささかオタクっぽいかもしれないが、カートリッジががんばってレコードの溝をトレースしていく様は見ていて飽きない。時に、プチだったり、パチだったり、ノイズが入るかもしれないが、それもはそれでそのレコードが生きてきた時代の雰囲気だと思って欲しい。あくまで程度の問題で、過ぎると聴き続ける気にはならないが。

レコードをかける行為とは、レコードを演奏するという芸術的行為なのである。芸術は複製ができないし、レプリカは所詮オリジナルに敵わない。レコードというモノ自体が芸術品なのである。これが容易にフルコピーできるCDとの決定的な違いである。

今回は、 Roland Kirk / Now Please Don't You Cry, Beautiful Edith を紹介しよう。1967年の録音で、レーベルはVERVE。彼は盲目のマルチプレイヤーで、同時に複数のリード楽器をプレイする奇異な演奏スタイルのため食わず嫌いの人も多いが、彼のレコードには駄盤はない。このレコードは聴きやすく、入門盤として絶対的にお奨めする。

(JHS JAZZ 山田)