Herbie Hancock / Future Shock

Future Shock

Future Shock

すっかりJAZZはBGMとしてのポジションを確立してしまった。今やバーだけでなく、蕎麦屋や焼き鳥屋でもJAZZをBGMで流す店が多い。その場の雰囲気を盛り上げ、2人の会話の流れを邪魔しないような類のJAZZは、お洒落でロマンティックなオトナの音楽として、プライス高め、アラサー以上をターゲットにしているような店でのBGMにはうってつけなのだろう。BGMとしてでしかJAZZを聞かない(聴かないじゃなくて)人からは、より深くJAZZ を聴いてみたいという欲求はおこりにくいように思う。かくいう私もそういう若者だった訳だし。

人それぞれ、JAZZに対するイメージは違うし、接し方も異なるにせよ、誰しもが「きっかけ」一つでディープなJAZZファンになる要素を持っていると思う。JAZZのバックグラウンドは広いのだ。その人がより深くJAZZを聴くようになるのか、 はたして一過性の流行で終わってしまうのかは、そのきっかけの大きさ次第。入門とか初心者といった単語がまかり通るのはクラシックやJAZZ位なもので、聴くためにお勉強しなければならない音楽なんて所詮いつかは面倒くさくなって飽きてしまうだろう。

青春時代、リアルタイムでなんらかの派生JAZZに接していた人は、最終的にJAZZ全般に帰還してくることが多いように思う。私がリアルタイムで聴いて JAZZはフュージョン。当時はクロスオーバーと呼ばれていた。思い返せば、WeatherReport、Stuff、Crusadersあたりの新譜LPがJAZZに触れた最初だったように思うが、当時それらはJAZZではなく、あくまでクロスオーバーというジャンルの音楽だと思っていた。

クロスオーバーのレコードを買うようになったのは、山下達郎のソロ・デビューアルバム「CIRCUS TOWN」を買ってからのこと。A面2曲目のWINDY LADYのイントロ、Will Leeの重くて跳ねるベースラインがたまらなくかっこよくって、これですっかり当時のNYやLAの腕っこきミュージシャンにのめり込んでしまうことになる。ついでに、初めて知ったJAZZジャイアンツと呼ばれる巨匠の名前は、チャールズ・ミンガスジョニ・ミッチェルの「Mingus」によってだと思う。彼女を聴くようになったのは「Don Juan's Reckless Daughter」のLPからだが、それはジャコ・パストリアスラリー・カールトンがバックでプレイしていたから。そのうち、いつの間にかフュージョンも聴かなくなってしまう。 商業主義的で金太郎飴的なレコードが増え、フュージョンに飽きさせられたからに他ならない。何も心に響かない耳心地がいいだけの単なるBGM音楽は、私にとってのBGMにはならなかったようだ。

今回は、1983年にColumbiaからリリースされた「Herbie Hancock / FutureShock」を紹介しよう。1983年というとCDが出始めた頃で、このレコードは当時私が使っていたカートリッジではトレースが出来ず、レコード離れのきっかけにもなった記念すべき(?)レコードである。後年CDで買い直したのだが、このCD(未だにまともにレコードで聴いたことがない)は、何事かと思われるほどのヴォリュームで、音の渦に巻き込まれながら、感じて聴くBGMなのである。

(JHS-JAZZ 山田)