『新説 桶狭間合戦』と『桶狭間・信長の「奇襲神話」は嘘だった』
新説 桶狭間合戦―知られざる織田・今川 七〇年戦争の実相 (学研新書)
- 作者: 橋場日月
- 出版社/メーカー: 学習研究社
- 発売日: 2008/09/01
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【信長の戦い1】桶狭間・信長の「奇襲神話」は嘘だった (新書y)
- 作者: 藤本正行
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2008/12/06
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藤本氏は現在主力となっている「正面攻撃説」の提唱者である。一方の橋場氏はそれを真っ向から否定する「迂回攻撃説」だ。橋場氏はこの迂回攻撃説を説明するにあたり、前者で藤本氏の名前を挙げて正面攻撃説を否定した(P182)。それに対し藤本氏は3ケ月後に後者を出版し、橋場氏の名前を挙げて反撃したのだ(第7章)。
これを裁くほうも大変なようで、wikiの「桶狭間」の項は異例のボリュームになっているだけでなく、両説を別立てにしているほどだ。居城たる論文の掲載誌もそれぞれ異なり、藤本氏は人物往来社の『歴史読本』だし、橋場氏は学研の『歴史群像』だ。
この戦いは本の中身もさることながら援軍たる帯も面白い。先に出版された『新説』の帯には「桶狭間はやはり奇襲だった」と挑発する。反論する『桶狭間』の帯には「これらの定説は大間違い」と真っ向から否定するのだ。とはいえ、藤本氏はこの分野では先駆者だから、橋場氏だけにかまってはいられないと、他の研究者の説にも異論を唱えている。
桶狭間の真実よりもこの論争自体のほうに興味がある。少なくとも、総理大臣が12000円の定額給付金を使うか使わないかの論争よりもはるかに知的であることは間違いない。