『大暴落 1929』
- 作者: ジョン・K・ガルブレイス,村井章子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2008/09/25
- メディア: 単行本
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日経クラシックスはフリードマンの『資本主義と自由』、ドラッカーの『マネジメント』の4分冊とつづき本書で6冊目だ。この出版企画には拍手を送りたい。次の1 冊も楽しみだ。ところで、この本の訳者は村井章子という人で、この人の翻訳本には面白い本が多い。『コンテナ物語』、『金融工学者フィッシャー・ブラック』、『マッキンゼーをつくった男 マービン・バウアー』などだ。
さて、本書は経済学者ガルブレイズの著書だが、仕立ては大暴落を時系列で追ったルポである。大暴落後の大恐慌についての本ではない。終章の「原因と結果」のページ数は309ページ中わずかに36ページだ。
いまアメリカではブッシュ大統領が第二のフーバーになりたくない一心で懸命だが、この本を読めばわかるとおり、1929年の大暴落は純粋に株式暴落だ。背景としては個人が手持ち現金の利回りを上げようと株式投資したためであり、預金保険がなかったからであり、ほかにもさまざまな要因がある。現在ではそのほとんどが繕われているから、大暴落から学ぶことは少ないかもしれない。しかし、大暴落が大恐慌に移行するメカニズムについては大いに学ぶことができるはずだ。
評者は経済専門家ではない、まちがいなく本書から学んだことがあるとすればガルブレイズの次の文章である。『政府は国民を安心させようと決まり文句をいうだろう。市場があやしい雲行きになったときの常套句「経済は基本的に健全である」とか「ファンダメンタルズは問題ない」というものだ。この台詞を聞かされたら何かがうまくいってないと考えるほうがいい。』
ブッシュ大統領は金融恐慌の可能性とリセッション入りを懸念した演説をした。麻生首相は先日の所信表明演説で日本経済は全治3年とした。まだ救われるかもしれない。