『大暴落 1929』

大暴落1929 (日経BPクラシックス)

大暴落1929 (日経BPクラシックス)

1955 年初版の本である。ガルブレイズ自身が1997年版のまえがきで「この本が長寿を保っているのは、増刷され本屋の店頭に並ぶたびに、バブルや株安など何事か起きるのだ。すると、この本への関心が高まる」と書いている。本書は日経BPクラシックスの最新刊で9月29日初版なのなのだが、本当にタイミングが良い。

日経クラシックスフリードマンの『資本主義と自由』、ドラッカーの『マネジメント』の4分冊とつづき本書で6冊目だ。この出版企画には拍手を送りたい。次の1 冊も楽しみだ。ところで、この本の訳者は村井章子という人で、この人の翻訳本には面白い本が多い。『コンテナ物語』、『金融工学者フィッシャー・ブラック』、『マッキンゼーをつくった男 マービン・バウアー』などだ。

さて、本書は経済学者ガルブレイズの著書だが、仕立ては大暴落を時系列で追ったルポである。大暴落後の大恐慌についての本ではない。終章の「原因と結果」のページ数は309ページ中わずかに36ページだ。

いまアメリカではブッシュ大統領が第二のフーバーになりたくない一心で懸命だが、この本を読めばわかるとおり、1929年の大暴落は純粋に株式暴落だ。背景としては個人が手持ち現金の利回りを上げようと株式投資したためであり、預金保険がなかったからであり、ほかにもさまざまな要因がある。現在ではそのほとんどが繕われているから、大暴落から学ぶことは少ないかもしれない。しかし、大暴落が大恐慌に移行するメカニズムについては大いに学ぶことができるはずだ。

評者は経済専門家ではない、まちがいなく本書から学んだことがあるとすればガルブレイズの次の文章である。『政府は国民を安心させようと決まり文句をいうだろう。市場があやしい雲行きになったときの常套句「経済は基本的に健全である」とか「ファンダメンタルズは問題ない」というものだ。この台詞を聞かされたら何かがうまくいってないと考えるほうがいい。』

ブッシュ大統領は金融恐慌の可能性とリセッション入りを懸念した演説をした。麻生首相は先日の所信表明演説で日本経済は全治3年とした。まだ救われるかもしれない。