『土地の文明』

土地の文明 地形とデータで日本の都市の謎を解く

土地の文明 地形とデータで日本の都市の謎を解く

皇居すなわち江戸城の正門は大手門ではなく半蔵門だったことを著者は発見する。幕府から見ると大手門は家臣の通用門であり、他の門とことなり橋ではなく土手で外界と繋がれている半蔵門こそが正門だというのだ。

現在でも天皇皇后陛下は日常的に半蔵門を使うが、皇太子殿下であっても半蔵門を使うには公式行事のときだけらしい。

江戸時代に戻ると、幕府は麹町から紀尾井町にかけて御三家や親藩・旗本を住まわせ幕府の威信にかけて警護にあたった。じっさい上智大学尾張家、ニューオータニは井伊家、赤坂プリンスは紀伊家の上屋敷跡地である。

そのいわば権力のど真ん中の麹町に赤穂浪士が多数潜んでいたことを著者は見つける。それどころか浅野内頭切腹のあと、警備充分な北町奉行所近くにあった吉良上野介邸が、幕府の命令でさびしい倉庫街である本所に移転させられているのだ。つまり、忠臣蔵は幕府によって仕組まれた事件だと著者はいう。

と、ここまでが第2章である。続く13章は北海道をスタートし、日本を南下して福岡、そしてソウルまでつづく土地にまつわるお話がつづく。下部構造の視点から文明を見る著者の視点は新鮮だ。